
アイキャッチはどのような手順で考えるのか? Vol.3 [ニーズ・ウォンツチャート手法]
メッセージ開発のための2つ目のフレームワークは、[ニーズ・ウォンツチャート手法]である。
ニーズ・ウォンツチャートについては、マーケティングを学んでいる人であればご存知だろう。
だがここで、そもそも「ニーズとウォンツはいったい何なのか?」について述べておく。
ニーズ(Needs)とは必要性のことであり、ニーズが高いサービスでは、歯医者や整体業などが
これにあたるだろう。
歯が痛くなれば、歯医者に行かなければならない。
腰が痛くなったり、肩が凝ったりすれば、整体師やマッサージに行かなければならないと考える。
また、法律の改正などがある時も、それに必要な商品・サービスはニーズが高い状態になる。
例えば、来年に迫った地上デジタル放送への移行は、今までのアナログ放送が使えなくなるので、
地デジ対応のテレビを購入しなければテレビ自体を見られなくなってしまう。
これもニーズが極めて高い状態である。
このように「○○しなければならない!!」というターゲットの心理状態が、
ニーズが高い位置にあるということである。
一方、ウォンツ(Wants)とは欲求のことであり、「○○したい!!」「○○が欲しい!!」という
ターゲットの心理状態が、ウォンツが高いといえる。
このウォンツが極めて高い商品の例を挙げると、ダイヤモンドがこれにあたるだろう。
少し専門的な用語を使うが、機能的価値と情緒的価値で捉えると、
ダイヤモンドは極めて機能的価値が低く、情緒的価値が高い。
ダイヤモンド関係者に怒られてしまうかもしれないが、極端に言えば、ダイヤモンドはまぎれもなく「石」であり、
「光る石ころ」にすぎない。
もしダイヤモンドを何の戦略もなく販売しようとしていたら、
ニーズもウォンツもない(3)の位置に属するカテゴリーだろう。
この「光る石ころ」を、今から30年~40年前にダイヤモンドの市場を取り仕切っていたデビアスは、
日本市場に対して「ダイヤモンドは永遠の輝き」というスローガンで、
ダイヤモンドのポジショニングを愛=ダイヤモンドとし、
「ダイヤモンドは愛の証」というメッセージを繰り返し消費者に伝えた。
情緒的価値以外の何ものでもない「愛」を象徴とし、あらゆるメッセージを市場に投げかけ、
ウォンツを高めていった。
このような素晴らしいメッセージ戦略により、ダイヤモンドはウォンツが高まり(2)の位置に上がったわけだが、
さらに☆印に到達するためのニーズを高めていく戦略を見ていく。
「婚約指輪は給料の3ヵ月分」というのを聞いたことがあるのではないだろうか。
デビアスは、このようなメッセージを確立していくために、あらゆる仕掛けをしてきた。
後に、郷ひろみが二谷友里恵と結婚した時、エンゲージリングの値段を記者に聞かれて、
「給料の3ヵ月分です」と照れながら答えたことから広く一般に広まり、
「婚約指輪は給料の3ヵ月分」が一般常識として定着していった。
今までウォンツしかなかったダイヤモンドという情緒的価値の塊を、
一般常識化によって、ニーズまで高めることができた象徴的な例かもしれない。
では早速、ニーズとウォンツを意識しながら、[ニーズ・ウォンツチャート手法]を使って、買わない理由、
いわゆる買わないターゲットの気持ちをまず推測してみよう。
商品・サービスが売れないのは、
(1)必要だけど欲しくない、
(2)欲しいけど必要ない、
(3)必要性もなければ欲しいとも思わない
という位置にターゲットの心理状態があるからである。
ほとんどの商品・サービスは、(1)または(2)の位置であるといっても過言ではない。
もし、(3)の位置であるようならば、その商品・サービスは残念ながらあきらめた方が良いだろう。
なぜなら、その位置からターゲットが購買行動に起こすために施策を試みることは、
かなりの労力とコストがかかるからだ
(ダイヤモンドを取り仕切っていたデビアスほどの戦略をとる覚悟があれば話は別だが・・・) 。
逆にニーズとウォンツの両方が高く、そのメッセージがしっかりと消費者に伝わっていれば、
その商品・サービスは必ず売れると言っても過言ではない。
さて、もう1つの見方として、同じカテゴリーの商品やサービスの場合でも、
必ずしも(1)、(2)のどちらかに位置するとは限らないということをお伝えする。
ヘアケア商品であるシャンプー、リンス、トリートメントなど、いわゆるコモディティ商品(日用品)の
場合であっても、商品の特徴によって、(1)や(2)のどちらか一方の位置に必ずなるとは限らないのである。
例えば、ヘアケア商品に対してニーズしか感じないターゲットにとっては(1)の位置にあり、
値段もしくは今まで使っていたのがなくなり「買わなくてはならない」という心理状態により、購買行動に移る。
ヘアケア商品のなかでも、何かしらこだわりがあり、ある程度高額商品の場合は
(2)の位置にあることが考えられ、ターゲットにとっては欲しいとは思っているが、今は必要ないと思っている。
(2)の位置にあるターゲットの心理は「欲しいけど今はいらない」。
この「今は」というのがくせものだ。つまり、差し迫った必要性がないから購買行動に移らないのだ。
この心理状態に対してどのようなメッセージを送ったら、「今、欲しい!!」という心の動きになるのかを考えたい。
あなたが広告をするべき商品・サービスはどの位置にいるだろうか?
☆の位置であれば、越したことはない。
だが、本コラムをお読みになっているということは、おそらくあなたの広告すべき商品・サービスは
(1)か(2)であろうと推測する。
もちろん(3)ではないことを願いたいが。
さて、ターゲットの心理状態の位置が決まったら、次に
「どのように口説かれたら、ターゲットは『買いたい』と思ってくれるだろうか?」を考えてみたい。
まずは両方のターゲットに語りかけるのではなく、どちらか一方に集中することが大切なことである。
(1)の位置にある場合は「いかにウォンツを高めるメッセージを考えるか?」、
(2)の位置にある場合は「いかにニーズを高めるメッセージを考えるか?」
ということになる。
そこで次回は、(1)、(2)それぞれの心理状態に位置しているターゲットに対して、
「どのようなメッセージを送るのか?」の思考プロセスを踏まえた事例を紹介しよう。
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