
ブランディング=「変えない」VS「飽きる」 Vol.1 ブランディングの目的
今号からのコラムでは、ブランディングについて述べたいと思う。
このコラムをご覧の方は、中小企業や店舗ビジネスの方々が多いかと思われるので、大手メーカーなどで
研究、実施されている商品のブランディングというよりは、会社やお店自体のブランディングについて、
いくつかの視点で考えていこう。
まず始めに、ブランディングとは、企業が顧客にとって価値のあるブランドを構築するための活動であることを
覚えておいていただきたい。
今回のコラムは、少々概念的で、具体的にすぐに役に立つ内容ではないように思われるかもしれないが、
ブランディングとは、実は中小企業や店舗ビジネスにおいても非常に重要なものとなるので、
参考にしていただければ幸いである。
さて、まずそもそもなぜブランディングが必要なのだろうか?
この問いに対して、様々な切り口があるかもしれないが、私は、次のように答える。
「価格競走に巻き込まれずに少しでも高く、少しでも多く、あなたの商品やサービスを
お客様に買っていただくことで、企業の利益を増やし、長期的に経営を安定させていくため」
ブランディングとは、上記の根幹となるプロセスであり、なかでも「長期的」というのが、
とても大事なキーワードだ。
ここについては、規模を問わずどの企業においても肝となるのではないだろうか。
そして当たり前のことだが、会社や事業はうまくいっている時と、うまくいかない時がある。
経営者やマネージャーは、うまくいかなくなると、何かを変えたくなり、そこで問題が生じることが多く見られる
(私も18年間にわたり会社を経営しているので、身に染みて感じている)。
ブランディングの観点から言うと、変えること自体を否定しているのではない。
変えても良いことと、変えてはいけないことがあるということだ。
また、うまくいっている場合でも、「飽きる」という心の動きも曲者なることがある。
以前、40年以上も続く長寿商品のブランディングを担当する、ある大手製薬会社の優秀な
ブランド・マネージャーから話を伺ったのだが、
「ブランディングとは、まさに『変えない』と『飽きる』の戦いである」
と言われた。
では、変えてはいけないこととは、いったいどのようなことなのだろうか?
それは、消費者のマインドに届けているメッセージの中で、「約束」をしていること。
これを「ブランド・プロミス」と言うが、これは決して変えてはいけないことだ。
もしもこれを変えるのであれば、他のブランドを立てる必要がある。
なぜならば、この「ブランド・プロミス」を変えるということは、
今までの顧客や消費者を無視した行為となるからだ。
車を例に挙げ考えてみよう。
例えば、ボルボ。
ほとんどの消費者のマインドには、ボルボ=「安全」というメッセージが届いていると思う。
しかし、もしボルボが新商品としてスポーツカーを出したとしたら、どうだろうか?
スポーツカーのイメージは、「安全」というよりは「スピード」や「格好良さ」であり、
場合によっては「安全」と反対のキーワードである「危険」を連想させる可能性すらある。
ボルボは「安全」というメッセージを、消費者と約束しているので、スポーツカーでは消費者のマインドの中で、
約束を破ることになってしまう。
こうしたことは中小企業でも、あてはまる可能性はたくさんある。
例えば、耐震専門の住宅リフォーム会社が、「これからの流行は『LOHAS』だ!」と考え、
同じブランドで耐震とは関係ない自然素材のロハスリフォームを打ち出す。
脱毛専門のエステサロンが、競合が多くなってきたので、同じブランドで癒し系のスパエステに変更する。
このような場合は、別のブランドを打ち出し展開する方法もあるが、
そうなるとそれまでそのブランド構築のためにかけてきた費用の何倍もの投資が必要となるだろう。
今まで全くマーケティング活動をやってこなかった会社ならまだしも、不用意に今までの消費者、
顧客のマインドに届けているメッセージを変更することは、「ブランド・プロミス」を破る危険性を秘めている。
このようにブランディングとひと口に言っても、目的を見失っては大きな損失となりうるのだ。
次回は、繊細な要素を含むブランディングの役割について考えていきたい。
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