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インタビュー集
広告、販売促進、ブランディング関連の専門家に岩本がインタビューしましたので、ご紹介します。
有限会社GMJコンサルティングサービス 代表取締役小野裕子氏インタビュー
小野裕子氏インタビュー
有限会社GMJコンサルティングサービス 代表取締役

顧客視点を極めるプロセスとは?


Vol.1 USPとは「約束」
スペシャルインタビューの第3弾は、企業の組織改革から教育を行う有限会社GMJコンサルティングサービスの小野裕子さん。顧客視点を極めるプロセスについて3ヶ月にわたりインタビューを掲載します。
岩本 まずGMJコンサルティングサービスの活動領域についてお聞かせください。
小野 GMJコンサルティングサービスの中心となっているのは教育です。
企業の中の問題解決の仕組みであったり、個人の方の能力のアップだったり、成果を上げていくためにどうしたらいいかというところへ、学習を軸にしたパッケージを組んで提供しているというのがGMJのやっていることです。
もともとは企業のウェブのプロモーションとしてどういうふうに機能させるかだったり、あとは販促物の企画、制作のディレクション部分の仕事をしていたので、その制作部門との2つの軸で動いています。
岩本 今まではどちらかというとプロモーション系で提供しているセミナーとかがあると思います。
どういうことを特徴として研修とかコンサルティング、もしくはセミナーというかたちで提供しておられるのですか?
小野 一番の強みはツール開発です。

実際にセミナーへ行った、いい話聞けたよねというのはよくありますが、それを具体的なツールに落とし込んで、その人に実際に持ち帰ってもらうものを学習の中に盛り込んでいく。これを一番の強みとして持っています。  

マーケティングに関してですと、いろいろなマーケティングの本にUSPって大事だよとか、自分のポジショニングって大事だよとか、顧客第一主義で行こうよというふうな言葉がたくさん出てきます。
それは知識としてわかったという段階にはすぐ行けますが、自分の実際の商売に落とし込んでいった時、どうすればいいのかというプロセスのところで皆さん、悩んでしまいます。
HOWの部分を持っていない状況があります。
そうであればHOWというプロセスをツール化して、広くだれもができるものを提供したい。マーケティングについても、USP抽出に関するツールを開発してセミナーを展開しています。
岩本 その中でも一番力を入れているという意味では、USPの抽出ということになりますか?
小野 顧客視点です。
岩本 実はうちも今まで顧客視点が大事だというメッセージを出しています。
御社ではプロセスのツールをいろいろ開発されていますので、今日は特に顧客視点について深く聞いてみたいと思っています。

そもそもなぜ顧客視点が大事か。そういうものを提供しようと思ったきっかけみたいなものが何かありますか?
小野 そもそものきっかけというと、実は私はゲリラ・マーケティングのトレーナーの資格を持っています。
このゲリラ・マーケティングを学んでいく時、マーケティングとはそもそも何なのかから始まっていろいろ勉強していきます。
その中にUSPというのがあって、USPって大事だよと。USPというのはUnique Selling Propositionの略で、独自の売りを提案していく。
それを掲げていくことがマーケティング行動の軸になる。ひいては商売、ビジネスの軸になるという考え方ですが、いきなり、あなたのUSPを出してとなるわけです。  

えっ、そんな大事なものを、こんな再現性もないやり方で、いったいどうやって出せと言うのか。当てずっぽうでキャッチコピーを考えるみたいに、ただ、ワーッと連ねればいいのか。これは良くない。そんなに大事なものだったら、きっとみんな欲しがっているのではないか。
だったら、USPとは何なのか。そのベースとなる心情、思想はいったい何なのか。

この二つのことを突き詰めていったのがきっかけとなりました。  

商売とはお客様からお金をいただき、自分のところのモノとかサービスを渡す。この価値の交換であるかぎり、顧客視点、お客様の喜ぶものを提供する視点が大事ではないか。
“商売の軸となるUSPのベースは顧客視点である”という考えに行き着いたのです。
この顧客視点さえ身につく癖、思考習慣がつけば、自分のビジネスの偏りとか、商売の仮説検証の立て方が変わってくると思います。
岩本 先にUSPのほうで何かきっかけがあって、そのあと顧客視点を深めなければいけないという順番だったのですか?
小野 そうです。みんながUSP、USPと言っていた時期があって、マーケッターの人もUSPが大事だと。
岩本 今でも言っていますよね。
小野 言っていましたが、大事なのはもうわかった。
では、どうしたら自分のUSPを導き出せるのか。そちらのほうがずっと大事ではないか。そういう時に、何かを導き出すためにはベースになる考えがあるから導き出せるのであって、何もないところからは導き出しようがない。
その時、商売のベースは何かと考えると顧客視点になると思いました。
岩本 USPということでの代表的な例として、ドミノピザのケースがありますよね。
小野 「30分でピザをお届けします。30分を過ぎたらお代は要りません」
岩本 今ドミノピザって業績が良くないではないですか。そうすると単純に、USPは効果的なのかという疑問視も巷で聞いたりします。
そのへんはどのようにとらえていますか?
小野 いろいろな意見があると思うので、これはあくまでも私の意見ですが、ドミノピザのあの「30分でお届けします」というのが果たしてUSPだったのかどうか。
これが私にとっては疑問です。
あれはドミノピザが宅配ピザの業界で圧倒的な差別化を勝ち得たい時に、日本においてマーケットシェアを獲得していくマーケティングプランの一つとしてやったことですよね。USPはもっと大きなもの、その上に来る思想です。  

家庭で焼きたてのピザを召し上がってもらいたいとか、私たちは清潔な環境で安全な食材をお届けしますとか、もっと高い位置の思想があって、それを広げていく手段として「30分でお届けします」と宣言することで、機会をものにした 。
実際それを達成することによってユーザーから信頼感を得てマーケットを広げていく。そういう自分たちのブランディングの成長プランの一部だったと思います。  

でも、その「30分でお届けします」というのが当たり前な状態になってしまって、ほかの業種、競合他社も同じぐらいのスピードでできるようになった時、その次に自分たちがどこにシフトしていくのかという成長シフトを誤ってしまったのではないか。
岩本 競合などもバッと入ってきたりしましたからね。
私はポジショニング的なものをうたっているようなニュアンスでとらえたのですが、そのポジショニングを真似されてしまったということですか?
小野 あっ、できるんだというのと、求められているんだというのがわかった時、これはうちでもできるし、お客さんに求められているのよねというのがあれば、もうすぐにそれを取り入れようと思いますよね。これは競争社会として健康な姿だと思います。それはそれとして、マーケット拡大のためにやったことと、自分たちがUSPという自分の企業の軸として持つこととは別なものだと思います。
岩本 そういうものと一線を画してUSPとは何だといった時、
小野社長は簡単に答えるとしたら何と答えますか?
小野 簡単に答えると「お客様との約束」ですね。
岩本 約束。
小野 はい。
岩本 ブランド・プロミスというのがありますが、あれと近いものですか?
小野 近いですね。
お客様といったい何を約束している集団なのか。それがUSPだと言っています。
岩本 今までいろいろお手伝いしたり、ワークショップとか研修などをされていると思いますが、実際にUSPをつくり上げるプロセスとして、うまくつくられていくパターンとなかなか難しいパターンがあると思いますが。
小野 USPをつくり上げていくプロセスで、皆さんが思い込みとして持っている間違いがあるのです。奇をてらおうとするのです。
岩本 奇をてらう。
小野 はい。言い回しとか言い方が特別なもの。
岩本 キャッチコピーみたいな感じ。
小野 そうでないといけない、独自性とはそういうものだと思われている場合がありますが、それはUSPには全然必要のないことだと思います。
岩本 そういうプロセスをつくって、つくった本人は満足しているわけですね。
小野 3時間のセミナーで、そのプロセスを全部持ち帰っていただくということを今やっていますが、持ち帰ったあと、それを社内全員でやるとか、チームでやるとかしている方は満足度が上がっています。
あっ、これだというものを見つけて、事業展開そのものを変えたり、個人事業主とかオーナーの方ですと会社名を変えてしまったり、そういうかたちで出ています。
岩本 出ているケースもあるということですか。
小野 はい。
岩本 もちろんオーナーの考え方が基本軸になると思いますが、社員やスタッフの方々と一緒にやることが効果的だと。
小野 効果的です。掲げて終わりというのはUSPではありません。
行動して、それを果たせるから信頼が生まれる。そしてお客さんが見込み客から既存客になり、常連になっていく。
約束を違えずに行動がきちっと守られているのが積み重ねになる。USPというのは行動して、守って、初めて効果を上げてくるものです。

 

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